主体107(2018) 9月 22日

地の果てまで

 

一九七七年六月のある日、総書記は重い足どりで執務室の中を行きつ戻りつしていた。地中海のある島国で対外経済部門の一活動家が不慮の事故で重傷を負い、危篤状態に陥ったという報告を受けたのだった。

患者の容態は絶望的だと言う。肩、胸、腰、足と骨が九か所も折れ、小腸が破裂し、肺が傷つき、頭も強い打撲傷を受けたのだった。それで現代医学の力では回復の望みがないから、家族を呼ぶようにと言って、当国の医者もさじを投げていた。

それにその国には、朝鮮の代表部が設置されていないので、連絡をとるのも容易でなかった。

関係者にどんな対策を講じたかを詳細にたずねた総書記は、遠い異国の病床で昏睡状態に陥っている患者に深く思いを馳せていた。

総書記の意中を知るよしのない幹部は、家族を早く送ってはと進言した。総書記は、家族を送るのは、蘇生の望みを捨てることだと、かぶりを振った。

「家族ではなく医師を送ることにしよう。患者の生命を救える有能な医師を送るのです。わたしの考えでは外科の医学博士がよいと思います」

深い愛情のこもった言葉に、居合わせた人たちは胸を打たれた。

「遠い外国で党の対外経済政策の貫徹につくしている同志が傷ついたのです。有能な医師を送って、なんとしても救わなければなりません」

総書記は、ある医学博士の名をあげて、明朝、飛行機で送り、さらにある国に政府代表団のメンバーとして派遣されている対外経済事業部の幹部を随行させるよう指示した。

生死の境をさまよっている無名の活動家に、慟哭する家族ではなく、蘇生の喜びを与える医学博士を送る総書記の温情を乗せて、翌朝、飛行機は空港を飛び立った。現地に到着した博士は、二回にわたる大手術を成功裏におこない、患者を十五日ぶりに蘇らせた。

患者が快方に向かっているという報告を受けた総書記は、たいへん喜んだ。

「患者が生き返ったのですね。本当によかった。これで安心しました」

総書記は多くの高価な薬を贈り、動けるようになったら祖国で治療を受けるようにと、重ねて配慮をめぐらした。

やがて九死に一生を得た患者は、飛行機で祖国に帰った。

総書記は、かれを平壌の病院に入院させ、破けた鎖骨は移植するとともに、体の全般的機能が回復するまで治療をつづけるよう懇切な対策を講じた。

いよいよ退院することになった日の朝、トランクをさげ、旅支度をして迎えに来た妻子を見て、かれは驚いた。

患者が全快したという報告を受けた総書記は、まだ出勤させてはいけない、景色のよい療養所で数か月間ゆっくり休ませよう、とこう言ったという。

「長いあいだ外国にいたので、妻子が恋しいだろうから、療養所には家族づれで行くようにしなさい」

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